Pebble Coding

ソフトウェアエンジニアによるIT技術、数学の備忘録

ハッセの定理の証明に必要な知識

ハッセの定理の証明には長い道のりと知識が必要です。
ブログに書ける量ではありませんので、どのようにして証明されるのかの概要だけを見ていきたいと思います。

ハッセの定理
Eを有限体  F_q (qは素数のべき)上の楕円曲線とする。
この楕円曲線の位数すなわち、有理点の数  \#E(F_q)は次の式を満たす。
 |q + 1 - \#E(F_q)| \le 2 \sqrt {q}

必要となる主な定理を3つみていきましょう。

定理1

 \alpha \ne 0を楕円曲線上の分離可能な自己準同型な写像とすると、この写像 \alphaの次数はこの写像のカーネルの数に等しい。

写像というのは一つの点から一つの点への写像ということです。
この写像は点(x,y)を点(p(x)/q(x), y s(x)/t(x))に写します。p, q, s, t はxの多項式です。
次数というのはのp(x), q(x)のxの最大次数のことです。
写像のカーネルの数というのは、写像の行く先が無限遠点になる点の数のことです。
分離可能というのは、p(x)/q(x)の微分が0でないという意味です。
 p(\alpha) / q(\alpha) = 0 であるとき、 \alpha p(\alpha) / q(\alpha) = 0 の重根を持たないことを意味します。

楕円曲線の自己準同型 - Pebble Coding

定理2

Eを体K上の楕円曲線としnを正の整数とする。Kの標数がnを割り切らないまたは0の時、n等分点 E[n]の群構造は、 Z_n \oplus Z_nと同型である。

 Z_n \oplus Z_nの群構造であるということは、  E[n]の任意の元は2つの元 \beta_1, \beta_2を使って、 m_1 \beta_1 + m_2 \beta_2と表せることを意味します。
ここで m_1, m_2 Z_nの元です。
この写像は2 x 2行列で表せることを意味します。

複素数体の楕円曲線等分点の群構造を調べる その3 - Pebble Coding

定理3

 F_qを有限体、 \overline {F}_qをその代数閉包とする。
 \phi _q: \overline {F}_q \mapsto \overline {F}_q ( x \mapsto x^{q}) をフロべニウス写像とすると以下が成り立つ。
 Ker ( {\phi _q}^{n} - 1 ) = E( F_{q^{n}} )
ここで1は恒等写像を表す。

 Ker ( {\phi _q}^{n} - 1 ) = E( F_{q ^{n}} )
これは、以下と同じことを表しています。
Eを F_q上の楕円曲線とし、(x, y) が (x, y) \in E(\overline {F}_q) であるとき、
 (x, y) \in E(F_q)であるのは、 \phi _q(x, y) = (x, y)である時かつその時のみである。
記号を使わずに表現すると、x, y を有限体の閉包(無限集合)の元とするが、楕円曲線上の点でもあるとするとき、
その点が有限体(有限集合)上の楕円曲線上の点でもある場合は、フロべニウス写像に限るということになります。

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